オフィス環境をクラウド化する「WaaS(Workplace as a Service)」のご紹介
日本電気株式会社 岡田 英彦 氏
ITの変遷
現在多くの企業では、ネットワークを活用した業務を連携してシステムを利用しています。また、お客様が要望するサービスや、やりたいことを実現するための手段が時代とともに変化してきています。
その結果、システム運用の複雑化、運用コストの増加といった問題が発生しています。これらの問題を解決するため、「メインフレーム」「PC」「オープン」の利用環境に続き、第4の波として期待されているのが「クラウド」を利用したサービスの連携です。
「クラウド」は今までのシステムと異なり、「サービスを受ける」「資源を所有しない」というシステム形態です。そのため「クラウド」では、必要なときに必要なものを必要な量だけ提供を受けることで、運用コストの削減やシステム導入のスピードアップなど大きなメリットを受けることができます。
クラウドサービス
クラウドサービスとは、多様な端末からネットワークを介して外部の標準化されたIT機能をサービスとして利用する形態です。
従来のアウトソーシングでは、自社で作成した独自プログラムの運用をベンダーに代行することでサービスを利用してきました。
一方、クラウドサービスでは独自プログラムの部分はそのまま継続して利用し、その他の標準化されたITサービスの部分を外部のクラウドサービスを利用することで、システムの迅速な導入、運用コストの削減、システムの柔軟性の向上などが期待できると考えられます。また、システムの複雑な運用から解放されるため、システムの信頼性や堅牢性を高めることも期待できます。
NECの「クラウド指向」
NECでは、クラウドの特長を活用して企業向けシステムをサービスとして提供する「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」に取り組んでいます。このソリューションでは、企業システムのメールやグループウェア、SFAなどの「フロントオフィス」から、基幹業務などの「バックオフィス」における適材適所のクラウドサービスを提供しています。
これらのソリューションは、共有環境/専用環境を用意して提供することにより、中小規模から大規模までの幅広いニーズに対応することが可能です。
「UNIVERGE Live」オフィスクラウドサービス
NECでは、お客様のニーズに合わせたオフィス環境を、クラウドコンピューティングによるサービスとして利用する「UNIVERGE Live」を提供しています。
「UNIVERGE Live」では、外出先や在宅勤務などの社外でも社内と同じような環境で業務が行え、遠く離れた拠点間でも顔を合わせているのと同じ感覚で会議をすることができます。また、オフィス文書などは電子化によりペーパーレスとなり、環境負荷も低減されます。その結果、コスト削減や運用管理の負荷低減、業務効率の向上などの効果を得ることができます。
このように「UNIVERGE Live」では、今まで自社で所有していたハードウェアやソフトウェアが、必要なときに必要なものを利用することができ、「持たざるオフィス」を実現することができます。
プライベート・クラウド実現への課題と成功のポイント
富士通株式会社 酒井 利弘 氏
プライベート・クラウド インフラの位置付け
クラウドコンピューティングとは、「雲(ネットワーク)の向こう側に存在するICTリソースをネットワーク経由でオンデマンドで利用するICTサービスの形」であると考えます。クラウドにはプライベート・クラウドとパブリック・クラウドがあります。
プライベート・クラウドにはさまざまな定義がありますが、パブリック・クラウドの技術を活用して企業内ICTインフラを最適化するための技術と捉えています。パブリック・クラウドでは、現行システムとの連携やセキュリティ面などに制限があるため、プライベート・クラウドへの移行が注目されています。プライベート・クラウドは、「運用コスト削減」「サービスレベルの自由度」「ICTガバナンス強化」などの点で期待されており、当面はプライベート・クラウドが主流であると考えています。
プライベート・クラウド インフラを実現する技術と課題
プライベート・クラウド インフラを実現するためには、「仮想化」をベースに、「標準化」「自動化」「サービス化」の大きく4つのステップを踏む必要があります。
富士通で実施したアンケートによると、仮想化技術導入の結果、「運用・管理コストの削減」に対して、期待と効果に大きなギャップがあることがわかりました。さらに調査したところ、このギャップを解消するためには、「方針の策定」「組織」「標準化」に重点的に取り組むことが重要であるとわかりました。「方針の策定」とは実現したいことの明確化、効果の定量評価です。「組織」とはプロジェクト体制の確立、役割分担、社内教育を含む人材確保です。「標準化」とは環境構築方法や運用監視の標準化です。
富士通における多くの事例より、プライベート・クラウドの効果は「コストダウン」「スピードアップ」「サービスレベルの自由度、法規制への対応」であると考えています。「コストダウン」は仮想化によるコストダウンに加え、次のステップである標準化の実現により、運用面でのコストダウンが図れます。「スピードアップ」は標準化、自動化の実現により、ビジネス展開に必要なICT導入のスピードが大幅にアップすることで、ビジネススピードの向上が見込めます。「サービスレベルの自由度、法規制への対応」は自社で機器を所有することにより、信頼性やセキュリティの観点で自由度を高められます。
ここまでいくつかの効果を挙げましたが、構築するには課題もあります。たとえば、企業内のICTインフラに大きなインパクトが出るため、「中長期のロードマップ」作成が必要となります。スケールメリットを活かすためには、ICTインフラ、運用の標準化・統一化を徹底する必要があります。運用を効率化するためには、組織間の役割分担の再定義が必要となります。この3点は先程も述べた取り組み項目であり、重要な点であると認識しています。
実現に向けた成功のポイント
プライベート・クラウドの実現・成功に向けて、「現状のインフラの問題把握・課題の整理」「実現の具体像を描く」「段階的な技術導入」「クラウド化対象の選定」「利用技術要素・製品の選択と標準化」「運用体制の再定義」が重要と考えています。
富士通の取り組み
取り組みとして大きく2点あります。1点目はお客様の構想策定の支援、2点目は実現する際の製品と技術、運用の支援です。具体的には、「クラウドワークショップ」というサービスの提供により、これからクラウドを検討するお客様に最適な構想策定の支援をしております。また、クラウドコンピューティング時代に向けた体験デモも行えるショールーム・検証サポート施設も準備しております。
システムの新しい潮流 ~ハイブリッド・システム
日本アイ・ビー・エム株式会社 北沢 強 氏
今回はクラウドの次に考えるべきこととして、IBMがサーバテクノロジーという観点で現在のお客様の課題をどう捉え、どういう戦略を立て、どう解決していくべきかという点について紹介します。
ハイブリッド・システムとは
「ハイブリッド・システム」とは、既存の汎用システムの互換性はそのままに、目的に特化されたシステムをシームレスに組み合わせて最適化して稼動するシステムであり、使う側に中身が異なるものであることを意識させません。
ハイブリッド・システムが必要とされる背景として、既存のITインフラの課題や将来を見越した設計の問題があります。
現在のデータセンターは、メインフレーム、UNIXサーバ、PCサーバなど、さまざまな種類の機器が混在し、複雑に接続され、連携しています。また、今後はそれらのシステムの継続性や互換性を保証しつつ、多様化するワークロード(アプリケーション特性)への対応や爆発的に増加するデータ量、リアルタイム分析などの処理性能要求に応えていくことが必要です。これを同時に実現するためには、既存の汎用システムと目的に特化されたシステムを組み合わせたハイブリッド・システムが理想と考えています。
ワークロードの最適化
今後も多様化するワークロードに対応するため、あらゆるワークロードに最適化できるようにシステムを変えていく必要があると考えています。一つは今までSystem zやPOWER7、System xなど、要件や予算に合わせてお客様に選択・組み合わせていただいていたものを集約していく水平統合型です。
また、もう一つは特定のワークロードに最適化したハードウェア、OS、ミドルウェア、アプリケーションを最初から一体化して提供し、必要に応じてお客様に組み合わせていただくものです。こちらは垂直統合型です。例えば、「CloudBurst」というアプライアンスを購入していただくと、導入して1週間でクラウドサービスが開始可能になります。
この2つのワークロード最適化の方向性で、2010年からインフラ系の製品も変えています。
zEnterprise System
2010年7月23日に発表したzEnterprise Systemは、H/W互換を保ちつつ性能と拡張性を向上させ、かつハイブリッド化による統合型システムという2つの特長を備えています。本体はzEnterprise 196(z196)というメインフレームであり、これまでIBMが出荷したメインフレームと完全互換を保ちつつ、より速く、より安く、よりスケーラビリティが高くなっています。また、今回からBladeCenter Extention(zBX)というラックが加わっており、これにブレードを最大で896枚(8ノード)搭載することが可能です。そして、これら全体を管理するのが、Unified Resource Managerというファームウェアです。このファームウェアにより、異なるアーキテクチャで構成されたマシン全体を一元管理するハイブリッド化を実現することができます。
ハイブリッド化により、異なるマシン同士の連携で構成されていた既存システムのTCOを3~4割削減できるという試算例もあります。
まとめ
IBMメインフレームは46年の長い歴史の中で、常に完全な互換性を保ちつつ、最新のテクノロジーを採用して革新を続けてきました。zEnterpriseはハイブリッド化により、POWER7やIntel x86のテクノロジーを統合し、高密度集約型システムとして継続的な技術革新を加速していきます。
今後のIBMのシステム製品はすべてハイブリッドに対応していきます。zEnterpriseは、その第1弾であり、1台でプライベートクラウドを実現する究極のマシンを目指しています。
ユーザ事例に見るクラウドコンピューティング適用のポイント
株式会社日立製作所 小川 秀樹 氏
昨今、クラウドの話が多くなってきています。具体的にクラウドを使用してどういうシステムを構築していけば良いのか、事例を交えてお話します。
クラウドの背景、期待
多くの情報部門の方から、「IT導入は進んだが、システムが膨大になり運用コストが膨らんできている」「より投資対効果を高め、新たな戦略的IT投資を行いたい」といった声を聞きます。
クラウドを導入することで「所有から利用へ」という利用形態の変化により、コスト削減が可能になります。しかし、元々IT部門の方が課題としている「新たな戦略的IT投資、経営への貢献」を実現する手段として、クラウドを活用することが本来望ましい方向であると考えます。
スケーラブル、オンデマンドといったクラウドの特長を生かして、「新たな事業の短期立ち上げ」や「現場の要望に応えるシステムの迅速な提供」といったニーズへの対応が、クラウドへの期待であると考えます。
クラウドの方向性、活用例
日立では2009年6月にクラウドソリューションである「ハーモニアスクラウド」を社外発表し、日立グループ全体でクラウドのビジネスを開始しました。
ハーモニアスクラウドは金融、産業・流通、公共といったさまざまな分野のお客様に適用しています。今までの事例から、今後はハイブリッドクラウド環境が主流になっていくと考えています(ビジネス環境の変化に合わせて、パブリック、プライベート、既存システムを選択・組み合わせる)。
ポイントは、システム/業務の特性に応じて適材適所でクラウドを導入していくことです。
ある金融機関では、システムをコア/ノンコア、定型/非定型に分けて、パブリック、プライベートクラウドを導入したり、既存システムを維持したりしています。
パブリッククラウドの活用
パブリッククラウドの適用例として典型的な業務は、情報共有基盤の活用です。
例えば、同じ会社でも事業所によってファイル管理やスケジュール管理が別システムのケースがあります。クラウドを導入することでメール、スケジュール、ファイル、電子会議などを共用することができます。
もう一つの適用例は、新規事業立ち上げ時にクラウドを利用する例です。ある事務機器メーカーのお客様では、自社構築では約4ヶ月想定のところ、テストを含めて約2ヶ月で構築した事例があります。
プライベートクラウドによるITリソース最適化
プライベートクラウド導入により、ITリソースの最適化が行えます。主に3つの適用分野があります。
①サーバ・ストレージの集約(遊休リソースへの対応)
②開発・検証環境の共有化(別プロジェクトで再利用)
③クライアントの集約(デスクトップ環境を一元管理し、コスト削減・情報漏えい防止)
既存システムとクラウド環境の統合管理
クラウド導入には特有の課題があります。
①混在環境(既存システムとクラウド)でのデータ連携/運用管理
②クラウドのリソース管理
従来の物理環境だけでなく、仮想環境も含めた管理が必要になります。大規模システムほど手作業は難しく、ツールなどを用いた自動管理/運用が必要です。
ビジネス上の課題を解決していく手段として、パブリッククラウド、プライベートクラウド、混在環境での適材適所の活用が期待されます。しかし、活用していく上では、統合的な運用管理やデータ連携が重要です。これらを検討し、クラウドを活用していただきたいと考えます。
~IIM REPORT NO.253(2011年2月発行)より抜粋
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