システム構築の現状
システム構築の現状は、業務システム担当部門が主管となり、システム構築の工程すべてに責任を負っているいわゆる縦割り組織となっています。
インフラの選定やサイジングについては、業務量や特性を基に算出しており、サイジングの精度は主管のスキルに依存している状態です。また、発注から納品までに約1ヶ月ほどの期間が必要となります。さらに、システム設計変更や要件変更が発生した場合に、その内容をインフラ調達に反映することが困難で、運用開始に間に合わないこともあります。
本番運用を開始後にリソース不足が判明した場合は、新たにインフラを調達する必要があり、結局新たなコストが発生してしまいます。反対にリソースが過剰であっても、余剰分を他システムに振り分けることができずに無駄が発生します。
図1

縦割り組織での問題
縦割り組織で問題となるのは、1)有効にリソースが活用できない、2)運用品質が統一されていないという2点に集約されます。
1)有効にリソースが活用できないという問題を具体的に述べますと、余剰リソースを他システムで利用できない、他システムからはリソースの利用状況が分からないということです。
また2)運用品質が統一されていないという問題は、運用管理基準や性能管理基準が統一されていない、システム間でOSやミドルウェアなどの環境が異なるため習得技術の再利用効率が上がらないという状況を表しています。
縦割り組織からの脱却
上記のような問題点を解消するために、縦割り組織から脱却して、インフラ部分を横串に切り出してまとめて管理することが必要です。
その結果、各業務システム担当者が担っていたインフラに関する工程の負荷を軽減できるようになります。この工程は業務に直結しない内容なので、切り出しすることができます。
業務システム担当者はIT統合基盤が提供するサービスメニューに沿って、必要なリソース量を申請して、そのサービスを享受します。つまり、インフラを提供するIT統合基盤要員と、インフラをサービスとして利用する業務システム担当者とで役割分担を行うわけです。
図2

IT統合基盤の任務
IT統合基盤要員に求められる役割は以下の通りです。
○割り当ての最適化を実施する
○仮想化環境の利用により論理的にリソースを割り当てる
○リソースの割り当てを柔軟に調整する
○仮想化環境に移行すべきでないシステムを洗い出す
○余剰リソースを見極めて、新たなリソースの購入を回避する
○メインフレームでの運用管理基準をオープンシステムにも適用する
仮想化環境での稼動統計情報
仮想化環境でリソースの割り当てを行う際には、1)ゲストOS稼動統計と2)VM稼動統計の2種類の情報を付き合わせて判断する必要があります。
1)ゲストOS稼動統計
○業務システム担当者(利用側)が計測できる情報で、使用しているゲストOSの利用状況を把握するために用いる
○主な管理項目は、CPU使用率、空きメモリー量、ページファイル使用率、I/Oビジー率・応答時間、ユーザコマンドごとのCPU使用率、ユーザコマンドごとのメモリー使用量、ファイルシステム使用率など
○上記項目に基づいて、業務システム担当者の責任において、ゲストOS内での事象に対応可能
2)VM稼動統計
○IT統合基盤要員(提供側)が計測できる情報で、仮想化環境であるVMの利用状況を把握するために用いる
○主な管理項目は、VM単位の物理使用量(率)
○上記項目に基づいて、IT統合基盤要員の責任において、VMの最適利用に関する判断を実施(リソース割り当ての妥当性、新たなVM追加の是非、適正なVMの組み合わせなど)
図3

これら2種類の稼動統計情報を個別に管理すると、以下のような問題が発生します。
・ゲストOSのCが過負荷になり、他のゲストOSに悪影響を及ぼした際、他のゲストOSの業務システム担当者がそれぞれのゲストOS稼動統計を調査しても原因が分からない
・IT統合基盤要員がVM稼動統計を調査しても、ゲストOSのCが過負荷になり他のゲストOSに悪影響を及ぼしている事象は確認できるが、ゲストOSのCが過負荷になった原因が分からない
・業務システム担当者は自身が担当しているゲストOSの範疇しか把握できないため、VMにリソースを割り当てるルールが適切であるかどうかが分からない
図4

上記の問題を解消して、仮想化環境における性能問題を正確に分析・解決するためには、業務システム担当者とIT統合基盤要員の双方が、ゲストOS稼動統計とVM稼動統計の2種類の情報を共有して、調整する場を持つことが必要です。このような体制を取らないと、迅速に問題に対処することができませんし、IT統合基盤要員の責務であるVMの最適利用に関する判断を行うことができません。
IT統合基盤のチェックポイント
IT統合基盤を構築・確立するために重要なのは、提供内容の標準化と役割の明確化です。提供内容の標準化とは、提供するインフラ(ハードウェア)、ソフトウェア、SLAなどをサービスメニュー化することです。その結果として、ノウハウが継承できたり、人材育成に繋がったり、品質が向上するといった効果が発揮されます。また役割の明確化とは、IT統合基盤要員と業務システム担当者の職務を、提供側と利用側で明確に分けることです。
上述しましたが、役割を分けたからといって管理までも分断してはいけません。双方が2種類の稼動統計情報を共有して、協調しながら管理・分析に携わることが大切です。
標準化の効果 教育 | 求められる技術範囲が限定できる 知識レベルを共通の尺度で測ることができる | | ノウハウ継承 | アプリケーション開発手法が共通化できる 他システムのサイジング情報を活用できる | | 品質向上 | 成功体験を共有できる (他システムで経験した)性能問題を予防できる | | 人材育成 | 将来に向けての投資が可能になる(真の「人財」を育てる) |
役割の明確化
| 縦割り組織で良かった点が失われる | 業務システム担当者の自由度が制限 他部門(IT統合基盤)との交渉・調整事項が急増 SLAの明確化が困難 | | IT統合基盤切り出しのデメリット | 縦割り組織のプレッシャー | | 役割と権限を明確化 | 業務システム担当者はビジネス要求に応じたSLAを策定して明文化 IT統合基盤要員は提示されたSLAを遵守するためにシステムを運用 |
IT統合基盤要員に求められるもの
IT統合基盤を担当する方には以下のような知識や役割が求められます。
1)アーキテクチャの基礎となる技術を身に付ける
ネットワーク、J2EE、RDB、OS、仮想化技術など広範な領域に対応する必要があります。何故なら、IT統合環境とはこれらのアーキテクチャが組み合わされた技術だからです
2)IT統合基盤要員の育成は役割の明確化から
上述の通り、IT統合基盤要員は業務知識からインフラ構築まで、幅広いスキル内容が求められます。そのための知識やスキルの習得に注力しなければなりません。そのため、アーキテクチャとテクノロジーの調査ミッションは、ISアーキテクトに担当させるべきです。
※ISアーキテクトはUISS(情報システムユーザスキル標準)の定義によります。 |